避難所での普段と違う状況の中での生活。
不安やストレス、閉塞感に苛(さいな)まれ、普段なら見過ごせるような何気ない事からのトラブルも発生しがちです。
不特定多数の人や動物が集まるで場所で、飼い主さんも愛犬も、そして周りの人も、皆が気持ちよく過ごせるように、日頃から愛犬をいろいろな環境に慣らし、トレーニングを行っておく事が大切です。
この記事では、
「では具体的にどうトレーニングするの?」
「大事なポイントは?」
などの疑問をお持ちの方のために作りました。
ご参考になれば幸いです。
キャリーバッグに慣らす-クレートトレーニング(小中型犬)
一刻も早く非難するには愛犬がすぐにキャリーバックに入ってくれる必要があります。
キャリーバッグを「病院に行く時に入れられる場所」「何か悪いことをした時に閉じ込められる場所」と認識してしまうと、見ただけで暴れてしまったり逃げ出したりしてしまう事があるかもしれません。
また、犬の大きさにもよりますが避難所ではキャリーバックの中で過ごさなければならないこともありますので、キャリーバックそのものがストレスの対象にならないよう、普段の生活の中で慣らしておきましょう。
これをクレートトレーニングと呼びます。
具体的には、
- 日常的にキャリーバッグを家の中に置いておき、犬が自由に出入りできるようにしておく。
- お気に入りの毛布やおもちゃなどを入れておき、犬が喜ぶ環境にしておく。
- おやつを見せながら「ハウス」の号令をかけ、キャリーバッグの中に入ってくれたらそのおやつを与えて褒めてあげるという事を繰り返す。
「キャリーバッグは入るとよい事が起きる場所」と認識させます。 - キャリーバッグに入ること自体に慣れてきたら、入っている時におやつを与え、扉をそっと閉めてみる。
※トラウマにならないよう、万が一怖がってしまったらすぐに開けてあげましょう。 - 扉を閉めてもすぐに開けてくれる事を認識し怖がらないようになったら、少しずつ扉を閉めている時間を長くして慣らしましょう。
犬の性格によっては根気がいるトレーニングになる可能性もありますが、「このトレーニングが愛犬のためになる」という気持ちを飼い主さんが意識しながら行う事が大切です。
トラウマになってしまう事だけは避けるよう、無理はせず日々の生活の中で少しずつトレーニングをしていく事が大切です。
犬の社会化 ― 家族以外の人、場所、におい、音、他の犬に慣らす
子犬の頃から飼い始める場合は、生後3ヶ月くらいまでに飼い主以外の人、動物、音など、普段と異なる環境や刺激に順応できるようトレーニングしておきましょう。
成犬になってからでも、時間はかかりますが慣らしていく事は可能です。
ただ、無理強いしてトラウマになってしまうと逆効果ですので、根気よく焦らずに愛犬の気持ちや状態を考えながらトレーニングしていく事が大切です。
以下、具体的な方法を見ていきましょう。
家族以外の人に慣らす
警戒心や恐怖心から知らない人に吠えたり、最悪の場合噛みついたりなどというトラブルを予防するには、家族以外の人に遊んでもらったりおやつを貰ったりして、できるだけ人と接する機会を作り、「他人」に慣らしておきます。
また、遊んでもらう際に撫でてもらう事で、体に触れられることにも慣れておく事ができます。
音に慣らす
避難所といういつもと違う環境下での音や他人の声、車の音などに怯えて吠えたりしないよう、普段からの散歩や生活の中で、できるだけ多くの体験をさせ、いろんな音に慣らしておきましょう。
避難所に特化して言えば、「人が多くいる場所」に慣れておくのが大事かと思われます。
公園など、人が比較的多く、たくさんの音や声もする場所に散歩の際に寄るなどするとよいかもしれません。
自分以外の犬に慣らす
散歩は他の犬に慣らす絶好の機会です。
他の犬に会ってもむやみに吠えたり威嚇したり怯えたりしないよう、日々の散歩で慣らしておきましょう。
散歩の途中でよく会う「お友達」から少しずつ友好関係を築けるようにしていくのもよいでしょう。
その他の必要なしつけ
犬が飼い主の意向を無視、または読み取れず、飼い主が犬をコントロールできない事態は防がねばなりません。
普段からのしつけで大事なポイントを以下に挙げます。
リードでのコントロール
避難所に滞在中もストレス解消のために周辺を散歩させる機会があるかもしれません。
その際に、いきなり走りだしたりして周囲を驚かせたりしないよう、飼い主さんがリードで犬をコントロールできるようにしておきましょう。
普段の散歩で引っ張り癖をなくすしつけをしておく事も必要です。
避難所ではボランティアさんが犬の散歩をしてくれるケースもあります。
他人であっても問題なく散歩できる犬であれば、飼い主さんも楽です。
噛ませない、飛びつかせない
恐怖や威嚇以外でも、友好的な犬の中には人と会うのが嬉しすぎて興奮してしまい、うっかり噛んでしまったり飛びついたりしてしまう子もいます。
犬にとっては「甘噛み」や「愛情表現」のつもりでも、その相手が幼い子供だった場合は重大な怪我になりかねません。
飼い主さんとの普段の生活の中で、遊んでいる最中に興奮して甘噛みしたり飛びついてきたりしたら遊ぶのを止める、相手にするのを止めるなどして、飛びついたり噛んだりしたら構ってもらえなくなるという事を覚えてもらいましょう。
「待て」「おいで」の大切さ
犬のしつけというと「おすわり」や「お手」を真っ先に考えがちですが、「待て」そして「おいで」も重要なしつけとなりますので、必ず教えておきましょう。
このふたつを愛犬が守るようになっていれば、避難所での変化に興奮して急な行動に出ようとした時に「待て」で引き留め、「おいで」で呼び戻して落ち着かせてあげる事ができます。
むやみに吠えさせない
犬が吠えるのには理由があります。
必要以上に警戒心や恐怖心が強い犬はちょっとした刺激で吠えやすくなります。
「犬の社会化」の項でも述べましたが、普段から色々な環境下で多くの経験をさせ、声や音などの刺激に慣れておくことが大切です。
また、退屈でかまってほしかったり不安だったり甘えたりしたい時にも犬は吠える事があります。
なぜ吠えているのか飼い主さんが犬の様子から理解する努力をし、その要求を満たし不安を取り除いてあげるようにしましょう。
普段あまり構ってもらえず放っておかれがちな犬は自己アピールのために吠える事が多くなります。
この記事を読んでいらっしゃる飼い主さんには犬を飼ったはいいが散歩も行かず遊びもせずほったらかし…というような方はいらっしゃらないとは思いますが、普段から自分の犬には十分な愛情を注ぎ「愛されている」という安心感を与えておくことが大切です。
トイレ
避難云々以前に犬のトイレトレーニングは大切です。
多くの犬は散歩の途中に済ませる事に慣れていると思いますが、その際の排泄物は飼い主さんが必ず持ち帰りましょう。
また、災害の種類によっては散歩に連れて行けない状況が数日続く事も考えられます。
そんな時のために決まった場所に置いたトイレでの排泄を教えておく事も検討してみてください。
災害を乗り切るために
一定期間を不特定多数の人が一緒に生活する事になる避難所では、普段どれだけきちんと愛犬のしつけができていたかが、その犬や飼い主さんがスムーズに避難所生活を送れるか否かの鍵になります。
周囲の人や飼い主さん、そして愛犬ができるだけストレスを感じることなく避難所生活を送り、皆で災害を乗り切るためには、普段から愛犬との信頼関係を築き必要なトレーニングやしつけを行っておく事がとても大切なのです。
<更新履歴>
2020/04/24 記事公開