ペットと一緒に暮らしている方の中には、数匹の犬や猫を飼いながらきちんと責任を果たしていらっしゃる飼い主さんや、また、犬猫の保護活動などをされていて一時的にご自宅に犬や猫が数多くいる状態である、という方もおられるでしょう。
筆者は最近、保護猫活動をされている団体様からご依頼頂き、ペット防災に関する勉強会をさせて頂きました。
その勉強会の中で、多頭飼い(10頭、20頭のレベル)されている方もおられ、災害時の対応について真剣に考え、また悩んでおられました。
この記事は、多頭飼いの飼い主さんが災害に備えて何をすべきか、その足掛かりになればと考え作成したものです。
多頭飼いの飼い主さんが災害発生時に直面する困難
ペットの数が増えるだけ困難度も増します。
では、災害発生時にはどのような困難が考えられるでしょうか。
全てのペットとの同行避難が困難(車が使えるとは限らない)
車が使える状況であれば、車を数回往復してでも避難所またはその他預け先へ全数同行避難することはできるかもしれません。
但し地震で交通がマヒしている状況では、車は使えないというケースも考えられます。
歩いて全数同行避難できるでしょうか?
犬、猫、サイズ、しつけ状況などにより、難易度は変わりますが、10匹を超えるような多頭飼いの場合、相当な困難であることイメージできると思います。
当面のペットフードやペットシーツなども持参する必要があります。
避難所での飼養が困難
そもそも避難所でどれだけのペットを受け入れてくれるかという問題はあります。
仮に目的全頭が入所できたとしても限られたスペース、状況の中での世話は、自宅での世話と比べより難しくなります。
また、そうあってはほしくないですが、一般の入居者に対して肩身の狭い思いをすることがあるかもしれません。
ペットフード・用品の確保が困難
ペットの数が多いほど多くのペットフードや用品が必要になります。
そもそも多頭飼いの飼い主さんは沢山の備蓄を持ってられると思いますが、それが何日持つでしょうか?
地震などで自宅が被災地となった場合、新たに調達するのは難しくなるかもしれません。
また自宅から避難する場合は、預け先や避難先にも持参する必要があります。
完璧な備えは無いけれど。。。
防災の世界に「完璧な備え」はありません。
「防災」とは災害被害を完全に防ぐというよりは、災害被害をできるだけ少なくする・小さくする「減災」を意図した言葉でもあるのです。
多頭飼いのペット防災も同様です。
ペットが多数いるから災害時の対応は無理!と思考を停止するのではなく、レベル10まで対応できなくてもレベル3まではやっておこう、というできる範囲で減災しようという考え方・取組みが大切です。
出来ることを出来るところまでやっておくのです。
では、具体的にはどんなことが出来るでしょうか?
「避難する」ための備え
こちら↓の記事もご覧になった上で、以下の避難するための具体的な備えをご確認ください。
ポイントは、「複数」、「分散」です。
預け先となってくれる人(親兄弟、親戚、友人など)に事前に話をしておく、良好な関係を築いておく
自宅よりはベターと思われる地域にある実家の両親、近くの高層マンションに住む友人、等々。
イザという時にペットを預かってくれるであろう人に話をしておき、良好な関係を築いておくと良いでしょう。
ペットの数が多ければ、選択肢もできるだけ多くしたいもの。
同じ地域であれば、頼りにしていた人も同じように被災する可能性がありますし、一か所に多数を預けるのは無理があります。
これを行うことにより、一人で背負い込まずに済み、精神的に少し楽になるかもしれません。
ペットホテルなどの預かり施設を複数確認しておく
日本全国にペットを預かってくれるペットホテルやペットシッターサービスなどが5千軒ほどあります。
自宅近くのこれら施設およびサービス内容などを予め確認(複数軒)しておきましょう。
更には災害の種類ごとにハザードマップで安全な場所にあるか、建物はしっかりしているか、なども合わせて確認しておくと良いでしょう。
ペットを預けた施設が被災する可能性もあります。
近くの大型の指定避難所を確認、自分だけの避難訓練をしておく
台風や集中豪雨など、事前に予報などで災害の発生が予測できる場合は、実家、友人宅、ペットホテルなどにペットを分散して預けに行く事も可能でしょう。
しかしながら地震などの突発的な災害の場合は、預けに行く余裕がない可能性もあります。
交通路がマヒし物理的に不可能になるかもしれません。
また、両親や友人の都合がたまたまつかなかったり、ペットホテルが被災または満室の場合もあるでしょう。
ペットの数が多いとかなりの困難が予想されますが、避難所へのペット同行避難は選択肢として常に考えておくべきです。
避難所は通常、地域の学校や公民館、その他公的施設が指定されます。
学校と公民館を比較すれば、学校の方が収容人数は多く、それはペットに関しても同様と言えます。
避難所を選択する余裕があるのであれば、近くの学校を。
平常時にその学校まで複数のペットを連れ、実際に歩いてみてください。
それが訓練になります。
(注:その学校が実際の避難所として開設されたときにどれだけのペットを受け入れるか、状況により変わってきます。)
公的避難訓練にも積極的に参加する
都道府県などが主催する大型防災訓練では、ペットとの同行避難訓練を行うことができる場合があります。
飼い主さん自らが避難訓練を経験する事によって、多頭のペットと避難する際に困難な事や不可能な事を見極め、それらに事前の対応策などを練っておくことができるでしょう。
また避難訓練に参加することで知り合いが増えることは心強いですし、有益な情報を得られるかもしれません。
「避難しない」で済ますための備え
災害の少ない場所へ引越す
かなり大胆な発想にはなりますが、そして多頭飼いの飼い主さんに限っての事ではありませんが、「災害が少ない場所に引っ越す」という方法もあります。
災害大国の日本ではありますが、台風が直撃しやすい場所、河川近辺の地盤が低い場所、沿岸部、地盤の緩い場所などは避けてご自身の住居を探せば、災害被害を受ける確率を減らすことはできます。
もちろん、住宅費用、引越自体にかかる経費や時間その他の負担を考えると簡単なことではありません。
ですが、新居購入を検討中だったり、いずれは引越しを考えているという多頭飼いの飼い主さんは、そのような選択肢がある事も心に留めておくと良いでしょう。
避難しなくてもいい頑丈な家に住む
災害の種類によっては家の場所を選ぶことによって被害を回避できますが、地震はそうはいきません。
日本全国、いえ世界どこでも地震は起こりうるし、回避することはできません。
であれば、回避せずとも揺れても倒壊しない家にすれば良いという考え方です。
特に、1981年6月の建築基準法改正(耐震基準強化)より前に建てた家の場合は、自治体の助成金なども活用し、耐震補強工事を行うと良いでしょう。
<更新履歴>
2020/06/14 記事公開