自宅に備蓄する防災非常食TOP写真

災害に備えて自宅に食料を備蓄されている方は多いでしょう。

その中でも多くの方は市販の防災専用食品のみを備えているのではないでしょうか。

当記事では、市販の専用食品にプラスして私たちが普段食べている一般食品も追加して総合的に自宅備蓄の防災非常食を充実させる方法を説明しています。

目標として常に1か月分以上の食料を備蓄する。
それを継続するにはどうしたら良いでしょうか。

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我が家の現状を把握する

仮に「1カ月分」を目標の備蓄食料とした場合、現状と目標の差異がどれだけあるか確認する必要があります。
まず家族の人数・構成料理の有無食事スタイル食材の買い物頻度などの現状を再確認するところからスタートです。

架空もし防くん家族(地方都市の集合住宅住まい)の場合を見てみましょう。

  1. 家族の人数 5人
    • 祖母(父方) 80代
       趣味で俳句をたしなむ
    •  50代
       定年まで波風立てず乗り切りたいと考える定時あがり会社員 趣味は将棋
    •  40代
       兼業主婦(パート) ”あと〇年がんばらな!”が口癖
    • もし防くん 20代
       大学生 釣った魚を料理するときだけ台所を占拠
    •  10代
       高校生 部活に忙しい 料理しない
  2. 一家5人揃って自宅で食事するのが基本。
  3. 料理の大半は母の仕事。”台所に主婦2人いるのは諍いの元”と考える祖母は料理に口を出さないようにしている。祖母は自分だけが食べる自家製糠漬け野菜と自家製梅干しは自分で用意。
  4. 母はパート勤務後にその晩と翌朝分の食料を買って帰るのが日課。
  5. 土日のどちらかは父・母で米などの重量物をメインに買い出し。
  6. もし防くんは毎週末海釣りに。釣果の魚は自ら料理して1週間位の間にみんなで消費。
  7. もし防くんと妹は食事時間が不規則になる場合があるのでレトルト・缶詰類を備えている。

災害が起こった際、もし防くん家族は何日食料に困らず過ごせるでしょうか?

大地震で生活インフラが断絶、商店やスーパーも被災して新たな食料調達不可、特に災害を意識した備え(飲料水はある)が無いとすれば、

冷蔵庫・冷凍庫内の食料 3-4日分
レトルト・缶詰類 1日分
自家製漬物類 1日分
魚の干物 1日分
その他菓子類 1日分
(計 7-8日分)

セーブしながら食べても1週間程度で底をつきそうです。
米があってもご飯を炊く手段(飲料以外に使える水・熱源)が無いのが痛い。

これでは大変心もとないですね。

あなたがあなたの家族の食事キーマン(もし防くん家では母がキーマン)であるのなら、普段何日分程度の食材があるか確認してみてください。
あなたが食事キーマンで無いのなら、食事キーマンと話をしながら確認してみてください。

災害時に食料不足で困るお宅

先にあげたもし防くん家族は、特別な例ではありませんが、常温保存できるレトルト・缶詰・干物・漬物があっただけ、まだマシなケースかもしれません。
過去の災害でも1週間程度は自力で凌いだものの、後は食料の配給に助けられたという方も多くいらっしゃるようです。

では災害時に食料不足で困るのは、どのような家庭でしょうか。

典型的なのは、

  • 料理する人が居ない
  • ほとんど外食で済ます

就職・進学などで1人暮らしをはじめた若い人に多いかもしれません。

料理する人いない ⇒ 食材の買い置きがない
ほとんど外食 ⇒ 外食・コンビニ弁当などはその場でフィニッシュ(残らない)

両親共働き(2人ともフルタイム)のケースも備蓄は少ないもの思われます。

※食事スタイルの良し悪しを述べているわけではありません。

災害時でも食料が足りるお宅

逆に災害時でも食料に困らないお宅はどのような家庭でしょうか。
ここまで読んで頂いた方は既にお分かりと思います。

  • 料理する人がいる
  • 常温保存できる食材を日頃から料理し、食べ、また備蓄している
  • 飲料用途以外の水を備蓄している
  • 生活インフラが断絶しても使える熱源を持っている

これらのことが防災非常食を考える上でも重要ポイントになります。

食料備蓄を改善するためにやること

ここからは具体的にどう防災非常食(食料備蓄)を改善するか説明していきます。

※食べ物には好き嫌いがあり、また食事スタイルも様々。あくまでも参考として見てください。

「備蓄」と「回転」(ローリングストック)を意識する

食材を「切れてから(または切れる直前に)補充」スタイルでは、イザという時に十分の量があるかわかりませんし、リスクが高くなります

例えば、日本人の主食である米(コメ)を例に説明します。

1カ月に10kgの米を消費するお宅において、在庫が切れてから補充するやり方では、その日によって最小0から最大10kgの米を備蓄していることになります。
米を補充してすぐに災害が起きれば、10kgの備蓄がありますが、逆に補充する直前は0kgになります。

米の備蓄量推移(切れてから補充)

当然災害はいつ起きるか分かりませんから、このやり方は非常にリスキーです。

この場合、例えば10kg以上の米を常に備蓄するやり方に変えると良いでしょう。

  1. 米びつの中の米が無くなる前に、10kgの米を新たに購入。
  2. 今回買った米を袋のまま備蓄、その前に買っておいた10kgの米を開封して米びつに投入。

米の備蓄量推移(常に10kg以上キープ)

これを繰り返すと常に10kg以上(つまりこのお宅において1カ月分以上で最大2カ月分)の米が備蓄されていることになります。

このやり方、「先入先出法」で常に一定量以上の備蓄をキープする、ことをローリングストックで回すといいます。

米以外の他の食材も同様に、「切らしてから補充」方式から「ローリングストック」方式に変えることを意識すると良いでしょう。

普段の食事に発酵食品と乾物を多く取り入れる

買ったその日または翌日には食べなければならない「足の早い」食材でローリングストックを回すのは現実的でありません
そもそもほとんどストックできないわけですから。

ローリングストック方式を取り入れると同時に、発酵食品や乾物などの比較的保存期間が長い食材を積極的に取り入れると良いでしょう。

具体的には、

発酵食品: 糠漬け、キムチ、チーズ、ヨーグルト、ナレズシ、味噌、酢、甘酒、酒、醤油、魚醤など

乾物: シイタケ、キクラゲ、スルメ、鰹節、煮干し、昆布、高野豆腐、海苔など

穀物系乾物: 米、麦、小麦粉、片栗粉、香煎、パスタ、冷や麦、蕎麦、ソーメンなど

これらの食品を使った料理に日頃から慣れておけば、イザという時にも困りません。

先人の英知を取り入れ自家製非常食を作る

冷蔵冷凍庫が登場したのは人類の歴史でみると極最近のことです。

それまでの我々の祖先は常温で食料を長期保存する方法に長けていました。
作った保存食を非常時や厳冬期などを乗り切るために備えていました。

ここでは昔からあるいくつかの自家製非常食の作り方(概要)を紹介します。
それぞれ常温で長期保存できる優れた非常食と言えます。

※詳しくは、それぞれ別記事で紹介する予定です。

<干し芋>

荒地に育ち手間が掛からず、個体が大きい割には多収穫のサツマイモは非常食としてもってこいの食材です。

干し芋は、一度火を通したサツマイモを7mm程度の厚さにスライス、そして乾燥させるだけです。

携帯非常食としても扱いやすくお薦め。

<焼き米>

焼き米は、昔の旅人が持ち歩いた携帯用非常食といわれています。

作り方は簡単で、米を研ぎ30分程水に浸ける。
次に、フライパンで10分程煎り、冷めてからすりこぎまたはスパイス用フードプロセッサーなどで粗めの粒・粉にするだけ。

食べる時に、湯を注いでお粥のようにします。

<ナレズシ>

魚を発酵させて保存する古来からの知恵です。

魚(内臓を取り、よく洗う)に8-10%程度の食塩をこすり付け、炊いて洗ったご飯をまとわりつけたものを保存用のビンまたは樽などに重ねていきます。
最後によく密封し、1か月程度で美味しく食べられるようになります。

乳酸菌発酵の作用で酸っぱくなりますが、栄養価が豊富なすぐれた保存食です。

魚の他、肉でも作れます。

料理する人が居なくても大丈夫

これまでは料理する人ありきの方法を述べてきましたが、料理する人が特にいない、基本的には外食またはコンビニ弁当で済ますという食事スタイルの方でも備蓄する方法はあります。

  • 市販の防災専用食品で備える
    「調理不要」「常温で長期保存可」の防災専用食品が多数市場に出回っています。
    7日分程度を専用食品で備えておくと良いでしょう。
  • レトルト・缶詰・真空パックの一般食品で備える。
    レトルトのカレー、サバ缶、真空パックご飯などを組み合わせるだけで立派な食事ができます。
    これも7日分程度を備えておくと良いでしょう。
  • インスタント食品で備える
    インスタント麺、インスタントスープなどで7日分程度備えておくと良いでしょう。
  • 野菜ジュース、青汁などでビタミン不足を補う
    缶の野菜ジュース、粉末の青汁などを備えておけば、非常時でもある程度のビタミン不足を補うことができます。

以上で合計3週間程度の食料をいつも備蓄していることになります。
勿論、経済面や備蓄スペース面で問題なければ更に分量を増やしても良いのです。

災害時に多くの一般食品を生かすために備えておきたいもの

災害発生時、水道・電力・ガスなどの生活インフラが被害を受け供給ストップする可能性があります。

そんな中でも以下のアイテムを備えておけば、一般食品を料理するなりして食することができます。

是非とも備えておきましょう。

飲料用プラスαの水

備蓄水

飲食物の中で一番大切なのは水です。

人間は水が無ければ5日と生きられません。
逆に水があれば3週間は生きられると言います。

従って言うまでもなく飲料水の備蓄はとても大切なことです。
そして顔や手を洗うといった衛生上の水も必要になります。

もし防では更に食料用(料理など)の水も考慮し備蓄することをお薦めしています。

最低限備えておきたい水の目安(1人分)
=1日6L(飲料用3L+衛生用2L+食料用1L)x 3日分18L

3人家族なら、18Lのポリタンク3個を用意するといった感じです。

勿論備蓄スペースに余裕がある人なら、量を増やすと更に安心です。

※トイレ用としては「凝固剤」「活性炭」が入った非常用トイレセットを使うと流し水を必要としません。

カセットガスコンロ

料理するためには熱源が必要です。
災害時にはカセットガスコンロが重宝します。

カセットガスコンロ(+カセットガスボンベ)があれば、炊飯、料理ができます。

カセットガスコンロとカセットガス

お薦めは屋外にも持ち出しやすい取っ手付きケースが付いたもの(上写真)

冷蔵冷凍庫の食品を腐らせず活用するために

冷蔵冷凍庫の中の多くの食料はそのままでは食べられないものです。
停電後2,3日はなんとかなってもそれ以降は惜しみつつも廃棄ということになりかねません。

食品を無駄にしないためにも加工のテクニックを覚え日頃から実践しておくと非常時に困りません。

乾燥させる

日持ちしない野菜、または肉や魚などで直ぐに食べないものは、乾燥させると良いでしょう。

自家製乾物
(中央:鶏のささみ肉、12時の位置から時計回りにナス、舞茸、竹輪、ピーマン、イサキ(白身魚)、キュウリ)

乾燥ネットがあれば手軽に長期保存可能な乾物を作れます。

乾燥ネット

<乾物作りのポイント>

  • しっかり乾燥させる(水分が多く残ると腐敗したりカビが発生することがあります)
  • 薄くスライスする、または切り目を入れると速く乾く
  • 雨天時は屋内に退避

出来た乾物は、そのままで、または水で戻すことによって料理の材料として使えます。
また食材や作り方によっては、そのままで食べられるものもあります。

塩漬けする

夏を除く比較的涼しい季節向きの方法です。

野菜の漬物

野菜、肉、魚など、塩漬けすることにより、長期保存が可能になります。

<塩漬け作りのポイント>

  • 全体に食塩をまぶす
  • 野菜は2-4%の食塩を(目安)
  • 肉・魚は8-10%の食塩を(目安)
  • 次第に酸っぱくなるのは乳酸菌発酵であり問題ありません
  • 腐敗とカビには気を付ける

※塩漬け保存については別記事にて詳しく紹介する予定です。

備蓄保管場所を分散させる

2階建ての一軒家にお住まいの方は、1階と2階に食料を分散保管することをお薦めします。
地震で1階だけが潰れる、豪雨災害で1階に浸水する、などのリスクに備えるものです。

また屋外の物置に備蓄ボックスを置き、その中に分散保管するのも手です。

自分に出来る分散方法を考えてみてください。


<参考文献>
IDP出版「賢者の非常食」発酵学者 小泉武夫著


<更新履歴>
2020/08/28 記事公開