炎天下および高温多湿の室内でのボランティア作業は身体にとって非常に過酷な状況であり、一歩間違えると「熱中症」という非常に危険な状態に陥りかねません。
熱中症を防ぐ為には以下の4つの点を常に意識しながら作業を行うことが大切です。
ごく当たり前の事から、気が付きにくい事まであります。
是非ともボランティア参加前に一読ください。
喉が渇かなくても、とにかく水分補給
作業中は大量の汗をかくことによって、体内から水分とナトリウム(塩分)が失われるため水分補給が必要となります。
しかし、体内から大量のナトリウム(塩分)が失われた状態で水だけを飲むと血液のナトリウム濃度が薄まってしまい、更にそれを防ごうとして体が余分な水分の対外排出を促すため利尿作用が高まってしまい、悪循環となります。
これを「自発的脱水症」と呼びます
日本スポーツ協会では熱中症対策として0.1~0.2%の食塩(ナトリウム40~80mg/100ml )と糖質を含んだ飲料を推奨しています。
酷暑・猛暑における災害ボランティア作業はスポーツと同様に身体に大きな影響を与えますので、水分と塩分を同時に補給できる経口補水液、更に糖質も含んだスポーツ飲料の摂取が望ましいでしょう。

摂取にあたって以下の点に留意しましょう。
- 「喉が渇く前から」「こまめに」水分補給をしましょう。
- 適度(10℃程度)に冷えたものを飲みましょう(キンキンに冷えたものは避けましょう)。
- コーヒー、緑茶、ウーロン茶、紅茶などカフェインを含む飲料は利尿作用があり、かえって脱水症状を引き起こしてしまう可能性があるため避けてください。
- 麦茶はカフェインを含みませんが、別途塩分の補給が必要となります。
下記の「塩分補給」を参考にしてください。
塩分補給も忘れずに
上記「水分補給」の項で述べたように、水分補給と同時に塩分も補給できる経口補水液、スポーツ飲料の摂取が望ましいですが、それらの確保が難しく「水」や「麦茶」しかない場合は、水とは別に塩分の補給が必要になります。
市販の塩タブレット、塩分を含んだ飴などで塩分を補充するようにしましょう。

何が何でも休憩する!
酷暑・猛暑における災害ボランティア作業では、「こまめに」「頻繁に」休息を取ってください。
具体的には、作業20分毎に休憩10分という感じで。
「せっかく時間を作ってお金を掛けてボランティアに来たのだから、もっと存分に働きたい!」
と思う方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、人間の体温に近い気温状況下における肉体労働がどれ程のものか?
やってみたら分かりますが20分続けて作業するのもカナリしんどいものです。
筆者(当サイト管理人)の経験では、元気な若者、気合が入っている人ほど、限界ラインを超えて作業しがちです。
途中で具合が悪くなるのは、意外と若者であったり体格の良い男性だったりします。
実際の災害ボランティア活動では、ボランティアセンターまたは班のリーダーの指示に従って、無理をせずこまめに休憩を取るようにしてください。
タイムキーパーを割り当てる
班のメンバーが限界ラインを超えて作業を行い、結果として具合が悪くなることが無いよう、班内において一人「タイムキーパー」を設置すると良いでしょう。
タイムキーパーの合図で班のメンバー全員が作業・休憩を繰り返します。
メンバー間の相互見守り
「自分が具合悪くなったら他の人に迷惑をかける」「ダウンしたら恥ずかしい(特に男性)」などと考えてしまい、自分の体調異変に気が付いているのに、黙っている人が時々います。
その気持ちは分かりますが、黙っていることにより適切な処置が遅れ症状が悪化、後に救急車で運ばれるようなことがあっては大変です。
班のリーダーはメンバーの様子を常にウォッチする必要がありますが、メンバーの数が多くなってくると目が行き届かなくなってきます。
そこで重要なのが、メンバー間相互で見守るという意識です。
「次第に無口になってきた」
「ろれつが回らなくなってきた」
など自分の身近にいるメンバーの様子を見守るという意識があれば、異変に気が付きやすくなります。
時には、
”しんどくない?”
”口数少なくなってきたけど大丈夫?”
などと積極的に声掛けすると良いでしょう。
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参考:熱中症の症状と対処方法
熱中症は重症になると、最悪の場合は後遺症が残ったり死に至ることもある急性疾患です。
初期症状の時点で迅速な対処が必要ですが、その初期症状に気付きにくいという問題があります。
「自分は大丈夫」という過信や「他の人に迷惑をかけてしまう」という気遣いが手遅れに繋がる事もあります。
少しでも「いつもと違うな」「何か変だな」と感じたら、迷わずに周囲の人に伝え対処しましょう。
初期症状
熱中症の初期症状には以下のものが挙げられます。
- めまいや立ちくらみ
- 大量の発汗
- 筋肉痛・腕や脚の筋肉の硬直、攣り(こむら返り)
- 生あくび
- 強い喉の渇き
- 唇の痺れ
対処方法
少しでもこれらの症状を感じた際には以下の対処を行ってください。
尚、自分自身で行うのが辛いと感じた場合は決して無理をせず、周囲の人に助けを求めましょう。
- 涼しい環境への移動
すぐに風通しのよい日陰や冷房の効いた屋内へ移動する。 - 体を冷やす
服を脱いで体内の熱を放出しやすくする。
保冷剤や冷却ジェルシート、氷嚢などで首の左右、腋の下、脚の付け根部分を冷やし、体温の低下を促す。
※上記はいずれも太い動脈が走っている場所であり脈が触れます。
※保冷剤等がない場合は水に濡らしたタオル等で代用します。
その他、扇風機にあたる・うちわで扇ぐ。 - 水分と塩分を補給する
塩分も同時に摂れるスポーツ飲料、経口補水液を飲む。
※スポーツ飲料を水で薄めて飲む方が吸収がよいなどと言われていますが、熱中症の段階によっては前述した「自発的脱水症」を引き起こしてしまう場合がありますので、薄めずに飲んでください。
病院への搬送が必要な中等度の症状
以下の症状が見られる場合は、病院への搬送が必要となります。
「この程度なら」と思ってもほんの少しの間に重症化する事もありますので、直ちに周囲に助けを求めて適切な処置を受けてください。
- 頭痛
- 吐き気または嘔吐
- ぐったりするなどの倦怠感
- 体に力が入らないなどの虚脱感
- 判断力や集中力の低下
- 発汗しているのに皮膚が冷たい
- 失神
集中治療が必要となる重度の症状
以下の症状は重度の熱中症となります。
万が一周囲でこのような症状を見かけたら直ちに救急車を呼んでください。
- ぼーっとしている、呼びかけに応じない、反応がおかしいなどの意識障害
- 体がガクガクと痙攣している・ひきつけを起こしている
- まっすぐに歩けないなどの運動障害
- 過呼吸
- 発汗がみられない
- 体に触れると明らかに熱い高体温状態
「日射病」「熱射病」「熱中症」の違い
以前はよく聞かれた「日射病」という言葉。
しかし最近は「熱中症」の方が多く耳にします。
また「熱射病」という言葉も時々目にします。
これらの違いは何なのでしょうか。
【日射病】
炎天下で直射日光に長時間曝される事で発生する症状です。
症状は前述したものと同様ですが、その症状の要因が「直射日光」であるものを特に「日射病」と呼びます。
【熱射病】
屋外・屋内に関わらず、高温多湿の環境下において体温調節機能が失われ体に熱がこもり高体温となってしまうものを言います。
こちらも症状は前述したものと同様です。
【熱中症】
上記の「日射病」「熱射病」など、高温多湿の状況で脱水症状や体温調節機能が失われたことにより体に変調をきたす症状を総じて「熱中症」と呼びます。
<更新履歴>
2019/09/19 記事公開
2020/06/26 文言見直し等の小変更