自然災害の多い日本は、常に「日常」が「非日常」に変わる危険性をはらんでいます。
また、災害というとまず地震、台風、集中豪雨などを思い浮かべてしまいますが、今まさに私たちがおかれている、新型コロナウイルス COVID-19のパンデミックという状況も「世界的災害」と言えると思います。
日々増え続ける感染者、海外の都市閉鎖などのニュース。ウイルスという見えない敵に対しての不安感は増すばかり。
その上、もし諸外国と同じように「緊急事態宣言」が発令された場合は、いくつかの特例を除き、外へ行く事も禁止され、現在一緒に暮らしている人以外との接触も絶たれた状態で数日間、或いは数週間過ごさなければならなくなる可能性もあります。
感染症に対する不安、交錯する情報へのいらだち、閉ざされた場所で過ごさなければならない閉塞感。誰でも気持ちが不安定になり落ち込みがちになります。
そんな時のためにお薦めしたいのが自分の気持ちが上がる本や写真、食べ物、CD、雑貨などを小さな箱や袋に入れておく、自分だけの「防災玉手箱」作りです。
たま-てばこ【玉手箱】
- 浦島太郎が,竜宮の乙姫から贈られた箱。開いてはならないという禁を破って開き,浦島は老人となった。
- 〔軽々しく開いてはならない大切な箱,の意から〕秘密にして人にあかさない大切なもの。
大辞林より
防災玉手箱を開ける時
この防災玉手箱は、普段は開けずにどこかにしまっておきます。
台風が直撃しそうで不安に駆られた時、電気も水も断たれ日常とは違う状況の中過ごさなければならない時、「緊急事態宣言」などで家に閉じこもらなければならず閉塞感に襲われた時など自分の心がピンチになった時が、この玉手箱を開く時です。
玉手箱の中に詰めたものが、不安定になっていたあなたの心が落ち着かせ、ワクワクした気持ちを取り戻させてくれるのです。
入れておくもの
何度も再読しているお気に入りの本や元気づけられるマンガでもいいですが、読みたいと思いつつも未読のもの、好きな作家さんの新刊などを読まずに敢えて入れておくのもいいかもしれません。
あなたが旅行好きであれば、大好きな街の写真がたくさん載っているガイドブックや関連本、ポストカード、あるいは以前にご自身がその街へ行った時に撮影した写真などを数枚入れておくのも一案です。好きな場所の写真は、ざわついた心を慰めてくれるものです。
お気に入りのアイドルや俳優、アーティスト、スポーツ選手の写真なども「頑張ろう!」という気持ちや元気が湧いてきますね。
大好きなスナックやスイーツ(長期保存可能な物)もいいと思います。普段はあまり食べないようにしているお菓子も、「こういう時は特別」だと思うとなんだか嬉しくなってきませんか?
いくつかの例を挙げましたが、この「防災玉手箱」には「これを入れなければならない!」という決まりはありません。
あなたが「不安になった時や落ち込んだ時に、何があれば、何を見たら元気になれるか」を基準に、ご自身で用意するものです。
防災玉手箱の更新日
この玉手箱を開けるのは「災害時などの特別な時のみ」と述べましたが、幸いにして災害が起こらず開く機会が全くなかったという事も起こり得ます。
そうなるといくら長期保存可能のお菓子でも古くなってしまいますし、お気に入りの俳優やアイドルの顔や髪型もずっと同じではありません。それどころか、あなた自身がまた別な人のファンになっている可能性もあります。
そして未読のまま取っておいた気になる本やマンガを、いつまでも読まないでいるのもなかなか辛いものです。
ですので1年に1回程度、この玉手箱を更新する日を設けます。
例えば9月1日などの防災に関連する日、またはあなたご自身のお誕生日などの忘れにくい日がよいと思います。
ご自身で決めた「玉手箱更新日」に箱を開き、お菓子は新しいものを入れます。読まずに我慢していた本も、新たに別な本と入れ替えます。
もちろん「まだ我慢できる!いざという時のために取っておく!」という人はそのままでも構いません。
このように新しく入れ替えたいものは交換し、残しておきたいものはそのままにして玉手箱を更新したら、また元の場所にしまってください。
提案の背景
防災や災害にはどうしてもネガティブなイメージがつきまといます。
防災グッズとして面白くもない懐中電灯や軍手、ラジオをリュックに詰めたり、我慢して家の中で過ごしたり…。
けれどもそんなイメージをできるだけ減らしたい、できる事なら楽しく防災したい、そんな思いから「防災玉手箱」を提案してみました。
好きなものを自分で選んで箱に詰める。このワクワクする作業が、災害時あるいは非常時にあなたの「心を守る」大切な「防災グッズ」になる事を願っています。